夜われ床にありて我心の愛する者をたづねしが尋ねたれども得ず。

余は彼の人を生前より見知れるが如き心持を覚へり。此は予てよりの我が習癖なれども、想う人に懐旧の情に似たる情感を持つ事屡々に及ぶ。或は彼の人の姿形とは余の原形質深くに記憶されたる塵芥が断片の一々に刻まれたりし物なるか。遠きAttikiの街に彼の人…

銘記せよ、秒速で。

これまで生きてきたということは、すなわち、これまで死を免れてきたということである。そして、そのことはすでにまごうことなき奇跡なのである。それを奇跡ではなく、ただの偶然の重なりに過ぎないというのならば、ではいったい何を奇跡と呼べばよいのか。 …

雨の日には一日中家の中にいて、ずっと雨音を聴いている自由と時間。

ある休みの日の朝に目を覚ますと、窓の外から雨の音が聞こえてきて、「あ、雨だ…」と思い、そして少し憂鬱な気分になる。しかしよく考えてみるとその日は日曜日だから、学校には行かなくてもよいのだということを思い出す。「あー今日は休みだー」と思う。そ…

このブログはこれからはラーメン食べ歩きブログにするよ。

隣の席の人と肩がぶつかりそうになりつつカウンター席に座ると、すぐさま氷水のグラスが目の前に置かれ、それを横目で見つつ「和風に煮たまご」と注文する。もう慣れた。店内入り口の引き戸のガラスがほとんど唯一の明かり取りである。窓の少ない店内はやや…

また同じエントリをうpしてた。

古い方を削除しました。

私は海を抱きしめていたい。

日曜日に発作的に海へ行きたくなり、片道2時間強、車を走らせた。 海辺に着くと、もう季節はずれにもかかわらず、休日の午後を海で過ごそうとする人々で賑やかだった。しかし、さすがに泳ごうとする人は見あたらなかった。 海を眺めていると、容赦なく潮風…

だから今こそ枯れぬ眼を晒せ。

永遠の時間が一瞬であるような気がするけれど、一瞬が永遠であったようにも思える。しかし実はそんなのはどちらでもよくて、どちらであってもさしたる違いはない。生は何物にも値しないが、生に値する何物も存在しない。この瞬間は何物にも値しないが、この…

ある心の風景

ここ数日、なんだか感情が抜け落ちて呆けたようになっていたので、これではいけないと、楽しいこととか苦しいこととか、いろいろと思い浮かべてはみたのだけれど、まったくの無駄だった。全てのことに意識的であらなければならないと思うのだが、そのことに…

時間は多くの人間よりも速く進む。

いつものようにあんてなを見たら、巡回先のブログが軒並み更新されていたので、「ヒャー」と嬉しい悲鳴などをあげて片っ端からShift+左クリックしてタブを並べて、さあどれから読んでやろうかどれを見てやろうかと身悶えしつつ悩んだ挙げ句に、そのうちのひ…

窓の外では、真夏の太陽が木々の緑と白い砂浜を浮き彫りにし、青さの濃い空が、果てまで続くように広がっていた。 そして、海もまた輝きながら、なにものかに満たされてそこにあった。 それは永久に続く音楽であり、一瞬のうちに終始する跳躍でもあったのだ…

Rain Tree

六道輪廻のユニヴァース

暗闇から黎明へ、水底から水面へ向けて、意識がゆっくりと浮かび上がる。かすかな底冷えを感じながら、いまだ明けやらぬ夜明け前。 混濁した意識が清明になっていくまでのしばらくのあいだ、ぼんやりと輪廻ということについて考えていた。あるいは無限と永遠…

目覚めよと呼ぶ声が聞こえ

夜闇に向けて窓が開かれており、そこから湿気を帯びた重い空気がゆるゆると流れ込んでいる。その空気は冷たいとも暑いとも付かず、ただ存在だけが外部からの異和として感じられ、そしてそこへ横たわる私に降り注ぐ。 未明に、幾度かの金縛りを体験した。 暗…

[妄想]言葉を弾丸に込めたサブマシンガンを小脇に抱え、「パパパパパパパパン!」と並みいる群衆を撃って撃って撃ち倒せ。

言葉をジャックナイフのようにひらめかせて、人の胸の中をぐさりと一突きするくらいは、朝めし前でなければならない。 と言ったのは、確か寺山修司だっただろうか。しかし誰が言ったかなんてそんなことはどうでもいい。いま私の手許には撃ち出す弾はなくなり…

ある一人称のゆらぎ

最近、少し気になっていることがある。そのうち誰かが書くと思っていたのだが、どうも書いている人がいないようなので忘れないうちにメモしておく。 それというのは、ある有名ブロガーの表記する一人称が、このところ顕著にゆらいでいるということだ。 例え…

水紋天珠

あの悲しみや苦しみはコアのようにおのれの内にずっと残っているものの、それに思考や行動を大きく左右されなくなってきたのは、精神系が回復基調にあるからだろうか。あるいは歳を経て自らに対してもまた老獪さを増し、そういったコアへの対処法あるいは処…

温い時間は過ぎ去って

光さえもまどろむ午後、土に埋まった罐のように赤錆れた時間は、いつまでも温く澱んで流れずにとどまるかのように見え、その実は目に見えぬほどの高速で一瞬のうちに流れ去ってしまう。 いつしか届きそうで届き得なくなったそれは、遙か昔に打ち棄てられ褪色…

Civilization4のオープニングを見るためにソフト買った。

なのに、マシンスペックが遅くてコマ落ちする。 オープニングはスワヒリ語の"Baba Yetu"という曲で、鳥肌が立つほど深みのある曲だ。 ゴールでウイーク中は、これをやり込むと決めたから。

玻璃街ろまん

雨上がりの街に風が不意に起こる 流れる人並みを 僕は見てる はっぴいえんど「12月の雨の日」 かなり昔、といってもたかだか数年前のことになるだろうか。(どうも私にとってのネットにおける時間経過は、ネット外の時間経過に比べて大分ずれているようで、…

あなたは今、どこにいますか。

嘗て希望の肯定されし時代がありしかど、既にその時代は去れり。故に汝希望することなかれ。 今夜も地下鉄銀座線は、定刻どおりに浅草駅を発った。そして街の灯が人の顔を瞬時に均等に照らしていった。乗客は、一様に列車の挙動に合わせて体を揺らしていた。…

いま私は眠りに就こうとしているが

いま、私は眠ろうとしている。その試みは成功することもあるし失敗することもある。いずれにせよ、眠る前に思いついたことを備忘のために書いておく。 明治42年に発表された夏目漱石の小説『それから』には、長井代助というナルシス男が登場する。まあ、主…

現代人が「占い」の類に求めるものは、自らの思考と判断の停止である。

人の未来や運命など、しょせん誰にも予見することなどできない。 だとすれば、人が未来や運命に向けて巡らす思考に、なんの意味もないし、その思考から導かれた判断に、なんの意味もない。それにも関わらず、人は、自己の希望や不安を未来に向けて投影する。…

梁塵秘抄

釈迦の御法のうちにして、五戒三帰を保たしめ、ひとたび南無といふ人は、花の苑にて道成りぬ 佛は様々にいませども、まことは一佛なりとかや、薬師も弥陀も釈迦弥勒も、さながら大日とこそ聞け 佛は常にいませども、現ならぬぞあはれなる、人の音せぬ暁に、…

静電気

指先と指先のあいだにバチッと静電気が飛んだ。その瞬間、「あっ、ごめんなさい」と相手が手を引っ込めた。陰陽両極があってはじめて成立する静電気に、どちらのせいということはないはずなのに。

速やかに地球に降り立つための方法

地球上へ降り立つのを失敗した。 まただ。 今回でもう7度目の失敗である。もううんざりである。あと何回こんなことを繰り返すのだろうか。誰かが俺に烙印を押す前に、自らの手で一生消えない烙印をこれでもかと押してやりたい気分だ。 STSのバルブを全開に…

俺はセイウチ

俺はあいつなんだ。お前があいつであるように、お前が俺であるように。つまり俺たちはみんな同じなんだ。 見ろよ、豚どもが銃を向けられて跳び惑ってるぜ。逃げ惑う代わりに。 私は泣いているのです。 コーンフレークの上に座ってさ、迎えのバンを待ってるん…

折れるシャーペン

I氏と会うのは20年振りだった。 当時の面影は朧気ながら残っているが、この人がそうだと言われても、そうなのか…としか思えなかった。なにしろ小学校低学年の頃の記憶しかないのだから。今ではすっかり初老となったI氏であった。 当時、I氏の在籍するつ…

青炎抄

夢の切れ目には、いつも大粒の雨がざあざあと音を立てていた。 不意に玄関の戸が開いた音が聴こえたような気がしたので、席を立って出てみると、玄関先に女性が立っていた。私の顔を見ると「久しぶりですね」と言った。「ああ、どうも」つい思わず挨拶をした…

昼休み、向かいのビルを眺めていた。

白い壁からの照り返しが窓越しにデスクに置かれたペットボトルにまで届いており、そして場違いなまでに抜けるような青空が窓の外にはあった。 はるか昔、まだ生まれる前の昔に、いつか自分がこういう光景を目にしたような気がしていた。どこか大きな建物の中…

自傷他害の虞あり。

最近「自決」という言葉の意味を噛み締めている。苦しみで人は死ぬのか。悲しみで人は死ぬのか。絶望で人は死ぬのか。愛によって死ぬか。そうかも知れない。しかし、それらの死についてさらに言えば「自決」の理由というものは、いかがわしく、嘘くさい。む…