このブログはこれからはラーメン食べ歩きブログにするよ。

隣の席の人と肩がぶつかりそうになりつつカウンター席に座ると、すぐさま氷水のグラスが目の前に置かれ、それを横目で見つつ「和風に煮たまご」と注文する。もう慣れた。店内入り口の引き戸のガラスがほとんど唯一の明かり取りである。窓の少ない店内はやや暗いが陰気というわけではない。車が外を通り過ぎる。


カウンターに並ぶおじさんたちが麺を啜る音が聴こえる。息づかいまで聴こえる。声にならない無言の声が聴こえる。まるでブロイラーのように、黙々と首を並べて啜っている。もちろん現代人は皆ブロイラーなのであり、ただ満足したブロイラーと不満足なブロイラーがいるだけだ。


程なくしてラーメンが運ばれる。スープはやや澄んでおり、魚粉が使われている。表面に海苔とねぎと三つ葉がのせられ、叉焼と巨大な煮たまごが熱いスープに浸かっている。スープを啜ると魚介系の香りと強すぎないだしの風味が口中に広がるものだから、あわてて麺を啜ると歯ごたえのある細麺が流れ込んできた。いつだってこの店は同じように美味いんだ。


やがて、満足したブロイラーとなって勘定をすませる。微細なる愉しみ。このようなミクロな生活の愉しみを追求していったならば、いったいどんなところに行き着くというのだろう。飲み残したスープを惜しみつつ店を出た。これが絶望でないのだとすれば、これは幸せというものだ。きっと。