「スカイハイ」

何年か前に、金曜夜にドラマをやっていたのは知っていたのだが、番宣で釈由美子がキメポーズで、「おいきなさい!」とか言ってるのを見て「はぁ…」とか思っていた。第一、私はテレビドラマは観ない。


で、Gyaoで「スカイハイ劇場版」を観たのは、一ヶ月ほど前だった。実はあまり期待してなくて、暇つぶしに観てみようと思ったのだ。しかし観てみたら意外と面白かった。まあ、それなりに、だけど。


そんで数日前、ブックオフで原作の漫画を売っていたので、3冊ほど買って読んでみた。




涙でた。



久しぶりに凄い作品に出会えた。思わずamazonで全巻注文してしまった。



人が死ぬと魂が肉体から離れ、死後の世界へと赴く。この世とあの世の間には、死者が通るいくつかの門がある。その門のうち、殺されたり不慮の事故によって死んだ人間が訪れるのが「怨みの門」である。怨みの門には一人の門番がいる。名をイズコという。彼女が、漫画「スカイハイ」の主人公というか狂言回し役である。漫画版のイズコは、私の昔の知人に姿も雰囲気も驚くほどよく似てる。その人も、自分には霊が見えるとポツリと言ってたっけ。ま、そんなことはどうでもいい。


各話に登場する死者は、それぞれの不条理さに直面し、それぞれの答えを出す。
怨みの門にやってきた死者に与えられる選択肢は3つ。

  1. 天国へ行き、再生の準備をする。
  2. 未成仏霊となって、現世を彷徨う。
  3. 現世の人間を一人、呪い殺す。


 イズコの「おいきなさい」のセリフは、それぞれ

  1. 「お生きなさい」
  2. 「お行きなさい」
  3. 「お逝きなさい」


という具合に、死者の選択と対応している。
不条理に直面したとき、それを受け入れるのか、立ち止まってそこに佇むのか、それとも不条理さを呪うのか。





此界は不条理さで満ちている。そもそも生まれること自体が不条理だし、死ぬこともまた不条理である。すなわち、生とは本源的に不条理なものである。生の終わりとしての死も同様である。しかし普段、人はそのことから目を背けて生きている。剥き出しの不条理と四六時中向き合えるほど、人は強くないからである。世界はその不条理さを隠蔽しつつ回る。
 しかし怨みの門にやってくる死者たちは、その剥き出しの不条理さに直面する。自らの不条理な死によって、生の不条理さに直面するのである。



スカイハイ 新章 1 (ヤングジャンプコミックス)

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 イズコの言葉が、心に残って離れない。


 「人間はね、生まれて来ることを選べないけど、死ぬことも選んじゃいけないの…」