外に降る1月の雨

昼間から降り続いている雨が、夜になって少し強くなってきた。


あまつさえ風も強くなっていて、辺りに叩き付けられる風雨の音が、波状になってここまで聞こえてきている。


いままで長い間、雨の音をじっと聴いていた。


ひたすら聴いていた。


単調に降り続く雨の音を聴いていると、午後の列車に乗って旅をしているような気分になる。しかし気付かないうちに、雨は私の感覚に入り込んでいるようなのだ。


やがて次第に聴力の分解能が増していき、地面に打ち付けられる水滴の一粒一粒が聴き分けられるような気がし、砕け散る水の粒子までが、そびえ立つ暗闇に浮かび上がるような気がした。時間も距離も失われた無明のなかに砕け散ってゆく水滴が、まざまざと眼に見える気がした。


ふと気が付くと、おびただしい水滴がゆっくりと無明の地面を目指し落ちてきていて、それらがやがて凄まじい無音の轟音を上げ規則正しく四方に飛散するのが見えた。そしてそれは何度も何度も、気が遠くなるぐらい何度も繰り返された。


私の周りには絶対的、根源的な無明が広がっていて、そのなかをこの雨は降っているのだった。この無明はいつまで続くのだろう。この無明に永遠に慣れなければならないのだろうか。


このまま雨が降り続き、やがて雨は洪水となってすべてを溶かし押し流す。その瞬間を私はいつしか庶幾していた。


この雨の音を聴き始めてからすでに何百年も経っているのだから。