昼休み、向かいのビルを眺めていた。

白い壁からの照り返しが窓越しにデスクに置かれたペットボトルにまで届いており、そして場違いなまでに抜けるような青空が窓の外にはあった。


はるか昔、まだ生まれる前の昔に、いつか自分がこういう光景を目にしたような気がしていた。どこか大きな建物の中で、青い空を見ていた記憶があるような気がした。しかし、それがいつどこでのことだったかは思い出せなかった。

そして突然、自分がそこにいる奇跡を感じた。いったい何が奇跡だったのか。その瞬間、その場所で、そのように在ることの奇跡である。よくわからないが、そうとしか言いようのない感覚である。それは存在論的疎外から解放された一瞬だったのだろうか。



こういうことはこれまでも何度かあったのだが、その経験から言えるのは、この体験を書き留めたり強く心に焼き付けておかないと、やがてすぐに忘れてしまうということだ。しかしこうして書き留めておいたところで、やがてその感覚は失われてゆく。